さまよえる田中のさまよわない日々⑦

夏です。田中(妻)です。
先日は影絵の公演を保育園でしました。
部屋も、影絵用の光源も暑く、文字通り汗水たらしながらの舞台でしたがとても楽しかった。
汗を流すと生きてる!と実感できて割りに好きです。
残りの連載原稿あげていきます。今回は夫です。
汗水たらさなくていいので読んでね。


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日本海新聞 月1回連載
「さまよえる田中のさまよわない日々」第7回

いいかげん家を探そう。

 帰国から1年もたつというのに、僕たちはまだ妻の実家に居候していた。

 いろいろと言い訳はできるが、つまりは田中の怠慢である。「いてくれていいのに」という妻の両親のありがたい言葉に「では、続いてお世話になります」となりそうな気持ちを抑え、本腰を入れて家探しをはじめた。

 実は、僕はこの町に来てから何度か住む場所を変えている。

 右も左もわからない状態で移住してきたときには、受け入れてくれた師匠のような方の紹介してくれた空き家に入った。そこでは友人と同居していたので、結婚を機に妻とふたりで暮らす家を探した(ここも空き家)。そして妻の実家、それから今住んでいるところ(ここも空き家だった)。

 家を探すというと不動産屋さんに行くのがふつうかもしれない。しかしこの町で僕は、そういうふつうの方法で、家を探したことはない。

 では、どうやって家を探すのかというと、「家を探しています」といろいろな人に言うのである。そうすると、空き家の情報などが少しずつ入ってくる。それから、町役場の持っている空き家の情報を教えてもらう。そして、家の中を見せてもらい、条件面などを話し合って決めるのである。

 こう書くだけなら簡単だが、なかなか大変なこともある。それでも、以前引越ししたときに教えてもらった家や、これまでの付き合いから新たに知った家など、いくつか候補となる家が出てきた。

 ところで、僕自身は、家に対するこだわりはほとんどない。まあ言ってみれば、「住めればいい」のである。

 妻も、貧乏旅行を楽しめるような人なので、「トイレは水洗じゃなきゃダメ」というようなことはない。いや、ほんとはトイレくらい水洗のほうがいいのかもしれないが。

 そんな妻の希望は、畑があること。ということで、僕らの新しい住まいは、裏に畑のある、築100年以上のとても大きな家に決まった。


(第8回に続く)



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